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Japanische Klassiker mit Furigana

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へいけがに

伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集

岡本 綺堂

Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme

Aozora Bunko

明治以後になって、この奇怪な伝説もだんだんに消えていった。あばた蟹を恐れるものも少なくなった。ところが、十年ほど前に東京の某銀行家の令嬢がこの温泉に滞在しているうちに、ある日ふとこの蟹を海岸で見付けて、あまり綺麗だというので、その一匹をつかまえて、なんの気もなしに自分の宿へ持って帰った。宿の女中も明治生まれの人間であるので、その伝説を知りながら黙っていると、その明くる晩、令嬢は湯風呂のなかに沈んでしまった。その以来、あばた蟹の伝説がふたたび諸人の記憶によみがえったが、それでも多数の人はやはりそれを否認して、令嬢の変死とあばた蟹とを結び付けて考えようとはしなかった。

「そんなことを言うと、土地の繁昌にけちを付けるようでいけねえが、その後にもそれに似寄ったことが二度ばかりありましたよ。」と、彼は付け加えた。

八月のあさ日に夏帽の庇を照らされながら、遠泉君は薄ら寒いような心持でその話を聴いていた。

漁師に別れて宿へ帰る途中で、遠泉君は考えた。おとといその蟹をつかまえたのは本多である。しかも現在のところでは、本多にはなんの祟りもないらしく、蟹はかえって隣り座敷へ移って行った。