Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
小夜衣
一
女房は彼を見て会釈した。
「おお、侍従どの。どこへ行かるるぞ。」と、権右衛門も会釈しながら訊いた。
「あの、そこまで……。」
何やら詞をにごして、侍従はそこそこに行き過ぎてしまった。その素振りがなんとなく怪しいので、権右衛門は幾たびか見返った。
「あの古狐め。どこへゆく。」
小夜衣
一
「姫をよべ。」
師直は忙がしそうに家来に言いつけて、小坂部を自分の枕もとへ呼ばせた。呼ばれてかれは取りあえず父の前に出ると、家来どもはことごとく遠ざけられて、侍従のやや不安らしい蒼白い顔が黄いろい秋の灯にうす暗く照らされていた。娘がおとなしく手をつかえるのを待ちかねたように、師直は声をかけた。
「小坂部。早速じゃが、かの『なよ竹』の返しじゃ。さきほど侍従を使いに立てて、塩冶の奥へ届けて貰うたらのう。」
言いかけて、使いに立った古女房を見かえると、侍従は引き取っておずおず説明した。
「塩冶の奥方にお目通りして、かの歌を窃とまいらせましたら、手にとりあげて御覧じて、しばしは顔をあかめておわす。さては便りあしからずと存じて、御返事はいかがと忍びやかに御催促申せば、重きが上の小夜衣とばかり仰せられて、そのまま奥へ……。