Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
師冬はおごそかに彼等に言い渡した。
「申すもいかがじゃが、父上はこの頃少しく心が乱れて居らるるようにも見受けらるる。それもみんな病いのなす業じゃ。就いては又しても陣触れなど仰せ出さりょうも知れぬが、師冬が沙汰するまでは一人たりとも妄りに動くな。敵はいずこにあるか、確かに見定めたあかつきには、この師冬よりあらためて沙汰するぞ。それまではむざと立ち騒ぐこと無用。この旨屹と申し渡したぞ。」
大殿も勿論おそろしいが、若殿の命令もまた重いので、言い渡された一同は委細心得て引き退がった。師冬は先ずこうして塩冶退治に対する予防線を張ったのであるが、その後二日ばかりは何の異変もないらしいので、彼も少しく安心した。将軍とても取り留めのない臆説を信じて、迂濶に塩冶を疑うようなこともあるまいと思っていた。
しかしそれは師冬の迂濶で、父の讒訴は案外に成功して、塩冶をほろぼす陰謀は暗中にだんだん進行しているのであった。
「姫上、おわすか。」
そっと声をかけて、小坂部の部屋へ幽霊のように忍び込んで来たのは例の侍従であった。もう初冬に近いこの頃の日は早く暮れて、木枯しというような寒い風の音が軒をゆすって聞こえた。