Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
空一面にきらめいている星の光りも、強い風に吹き消されるかとばかりに瞬いていたが、その星明かりをせめてもの頼りに、三人は暗い夜路をひたすらに急いだ。
「姫上。お早いことでござりまするのう。」と、侍従はあえぎながら言った。
「早いはずじゃ。心が急く。」
小坂部は采女に手をひかれて、ややもすれば吹きやられそうな木枯しの中をうつむき勝ちに走った。侍従は幾たびかつまずきかかって、そのあとを追った。かれは杖を持って出なかったのを悔んだ。塩冶の屋敷は七条のはずれにある。その門前までゆき着いた時には、侍従の額からは汗が滲み出した。
「頼む。」
采女が門口から案内を求めると、一人の若侍が長巻をかかえて出て来た。彼は中国訛りで訊いた。
「どなたでござる。」
「それがしらは執事殿の館からまいった者。夜中の推参、憚りありとは存ずれど、何を申すも火急の用事じゃ。奥方に窃とお逢い申したい。これにあるは殿の御息女じゃ。」
若侍は狐にでも化かされたかというように、暗い中をじろじろと透かし視ていたが、やがて奥へ引っ返して行った。いわゆる飛ぶ鳥も落とすという威勢をもっている高武蔵守師直の息女が、夜陰に忍んで尋ねて来る――それは確かにこの中国武士をおどろかしたに相違なかった。