Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
それを待ちかねたように、小坂部は探り寄った。かれは暗いなかで男の名を呼んだ。
「采女……采女……。」
呼んでも返事がないので、小坂部は探りながらに這い寄って、男の身体を膝の上に抱え起こすと、かれの手先きに触れた男の頬には少しの温か味もなかった。口や鼻に手をあてて窺うと、微かな息もかよっていないらしかった。なまぐさい血の匂いがかれの鼻にしみた。
「もし、異国のお人……。采女はもう……。」と、小坂部は声をふるわせて言った。
「もう息はござらぬか。」と、男はやはりしずかに言った。「深手のようには思うたが、ここまで担いで来る途中で息が絶えたと見えまする。」
「采女……采女……。」
小坂部は男の耳に口をよせて呼びつづけたが、采女はなんとも答えなかった。何をいうにも漆のような深い闇があたりを一面にとざしているので、かれは自分がしっかり抱えている男がどんなむごたらしい姿になっているのかを知ることも出来なかった。
「もし、早く燈火を……。焚火をしてくださりませ。」
「焚火はならぬ。燧石をどこやらで落としてしまいました。」と、男は暗いなかで冷やかに答えた。
小坂部は失望した。