Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
「都の父や兄のところでない、死んだ男のところでない。あれをお見やれ。」
彼は小坂部の手をとって、家の外へ連れ出した。秋の大空は鳶色に暮れかかって、蝦蟆の這っているような奇怪な形をした黒い雲のかたまりが西の方にたむろしていた。雲の真下には青黒い松の大樹が高く繁っていて、その枝や葉がくれに浮き上がっている古い城の白壁は、幾羽の鷺が翅をひろげて飛びかうようにも見られた。赤松律師則祐が初めに宮方となって旗揚げをした時に、この姫山の古城を修理したのであるが、建武中興の後に赤松は武家に付いて足利の味方になった。そうして九州に、関東に、その居所を移しているので、城はふたたび空城同様になってしまった。
「あの城は……。」と、小坂部は空を仰ぎながら訊いた。
「姫山の城……かつては赤松の楯籠っていた城じゃが、今はおそらく守る人もあるまい。」と、男は説明した。「かしこに隠れたら十年二十年はおろか、百年千年棲んでいても、誰に見付け出さるる虞れはあるまい。お身の隠れ場所はかしこよりほかにない。さあ、行かれい。わしが案内する。」
彼は先きに立って大股にあるき出した。小坂部はもうそれに抗う気力はなかった。