Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
」と、男は雲を指さして教えた。
小坂部も言い知れない敬虔の念に囚われて、うやうやしくその雲の影を拝んだ。かれは再びこの天主閣の頂上から下界へ降りようとは思わなくなった。かれはその日から眇目の男に一種の教えを授けられ、さらに秘密の呪文を伝えられたが、賢いが上に学問のあるかれは、教うる人をおどろかすほどに一々それをよく会得した。かれは生きながらに蛇をくらった。蜥蜴をくらった。猫をくらった、鼬をくらった。そうして、一日のうちに三度ずつ采女の名を呼ぶことを許された。呼べば、恋人はかならずその姿を見せた。
こうして幾年を送ったか、かれもおそらく記憶しなかったであろうが、その間も下界には兵乱が絶えなかった。取り分けて敵と味方が争奪の目標になっている都の巷には、剣と火との禍いが幾たびか繰り返されて、町の大半は焼け野になってしまった。塩冶をほろぼして、敵にはあざけられ、味方には憎まれた高師直は、その罪ほろぼしに真如寺を建立したが、彼はいつまでも敵味方の呪いのまとになっていた。そういう周囲の事情から、彼は次第に主君の信用をも墜しかけて来たところへ、足利兄弟が不和を生じて、兄の尊氏と弟の直義とが敵味方に引き分かれることになった。