Japanische Klassiker mit Furigana
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へいけがに
伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集
岡本 綺堂
Lesen Sie 伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集 (へいけがに) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.094 Zeichen · 411 Bildschirme
守り神
一
もうこれでお別れ申しまする。」
行きかかる小坂部の袂にまた取り付いて、師直は悲しそうな声をあげた。
「まあ、待て。待ってくれ。お身、どうでも親たちを見捨てて行くか。」
雨にぬれた師直の顔の上には、さらに涙の雫がほろほろと流れ落ちた。
守り神
一
師直兄弟が最後のありさまは、大勢の歴史家に因って委しく記されているから、今あらためて説明するまでもあるまい。かれらの死はいにしえから記録に残っている武将や武士の最期の中でも、最もいたましい、最もみじめなものであった。かれらはそのあくる朝、出家に形をかえて、墨染めの法衣を着て、蓮葉笠を深くして、馬上で京をさして落ちる途中を、味方の者どもに見咎められて、二人ともに鞍の上から斬り落とされてしまった。血みどろになった二つの死屍は折り柄ふりしきる春雨に洗われながら、野良犬の亡骸のように川原に投げ捨てられた。大勢の家来はとうに皆逃げ散ってしまって、最後までも主人のそばに付きしたがっていた横井弥兵衛ら七、八人は、防ぎもならず、逃げもならず、多勢に押っ取り籠められて膾のように斬りきざまれた。こうして、足利将軍の執事という高武蔵守師直の一門眷族はほろび尽くした。