Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠3
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠3 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 214.131 Zeichen · 423 Bildschirme
真黒になって手足を縛られた人間が、やっと立ち上った形は、大きな蠑が天上するような形であります。手足こそ縛られているけれども、いっこう猿轡を箝められた模様もないのに、口を利かないのはなぜだろう。なんとも言わないで、蠑の天上するような形をしてやっと長持をもがき出した黒い人影は、人魚の児が這い出したようにして畳の上をのたくって、竜之助の方へと寄って来るのであります。
のたりのたってその男は、ついに竜之助の膝のところまで来ると、その膝を枕にするようにして竜之助の面を打仰ぎました。
「叱!」
竜之助は左の手でそれを払い退けると、その男は執念く再び竜之助の膝にのたりつくのであります。
「うるさい」
竜之助は再びそれを払い退けました。払い退けられて男は三たび竜之助の膝にのたりつきました。その口を慌しく動かして、咽喉首が筬のように上下するところを見れば、これは何か言わんとして言えないのでした。訴えんとして訴えられないものでありました。
突き放され、突き放され、またのたりつく有様は他目には滑稽でもあるけれども、その当人は名状し難い苦しみにもがいているのです。如何せん机竜之助は、それを滑稽として見ようにも、また苦悶の極みとして見ようにも、どちらにしても見て取ることができない人でありました。