Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠4 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 264.133 Zeichen · 524 Bildschirme

Aozora Bunko

兵馬はそこへ手を当ててみると、何かの刃物でズーッと横に筋が切り込まれてあります。その切込みはまだそんなに深くはありませんでしたけれど、退引ならぬ破牢の極印であることは確かであります。

「ああ、大胆なこと」

と言って兵馬は嘆息しました。

「二番の室でも、これをやっている、成敗ともに我々が引受けるから、まあまあ安心して寝て居給え」

奇異なる武士は騒ぐことなく、兵馬をなだめて、またも静かにその切込みへ刃物を入れました。その刃物というのは、前夜隣室の羽目の隙間から手に入れた鑢様のものであります。兵馬は、その上にかれこれと言いませんでした。それは余人ならぬこの人が、かく決心して事をはじめた上は、いまさら自分が是非を論じても駄目だと思ったからであります。

「世が世ならばこんなことはしたくはないが、時勢を聞いてみると、どうしてもここに安んじてはいられぬのじゃ、文天祥が天命に安んずるこそ丈夫の襟懐ではあるが、盗人の屋尻を切るような真似をせにゃならぬのも時節。宇津木、君だからとて、そうそう正直に冤の晴れるのを待ってもいられまい。上に名判官ある世には、獄屋のうちにも白日の照すことはあろうけれど、ここらあたりでそれを望むは、百年富士川の流れが澄むのを待つのと同じこと」