Japanische Klassiker mit Furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme
誰も降者がないのを確かめた車掌は、一分と立たないうちにまた車を出そうとした。敬太郎は錦町へ抜ける細い横町を背にして、眼の前の車台にはほとんど気のつかないほど、ここにいようかあっちへ行こうかと迷っていた。ところへ後の横町から突然馳け出して来た一人の男が、敬太郎を突き除けるようにして、ハンドルへ手をかけた運転手の台へ飛び上った。敬太郎の驚ろきがまだ回復しないうちに、電車はがたりと云う音を出してすでに動き始めた。飛び上がった男は硝子戸の内へ半分身体を入れながら失敬しましたと云った。敬太郎はその男と顔を見合せた時、彼の最後の視線が、自分の足の下に落ちたのを注意した。彼は敬太郎に当った拍子に、敬太郎の持っていた洋杖を蹴飛ばして、それを持主の手から地面の上へ振り落さしたのである。敬太郎は直曲んで洋杖を拾い上げようとした。彼はその時蛇の頭が偶然東向に倒れているのに気がついた。そうしてその頭の恰好を何となしに、方角を教える指標のように感じた。
「やっぱり東が好かろう」
彼は早足に瀬戸物屋の前まで帰って来た。そこで本郷三丁目と書いた電車から降りる客を、一人残らず物色する気で立った。