Japanische Klassiker mit Furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme
二十七
敬太郎は下宿の机の前で熱に浮かされた人のように夢中で費やした先刻の二時間を、充分須永と打ち合せをして彼の援助を得るために利用した方が、遥かに常識に適った遣口だと考え出した。彼がこの苦い気分を痛切に甞めさせられる頃から空はだんだん光を失なって、眼に映る物の色が一面に蒼く沈んで来た。陰鬱な冬の夕暮を補なう瓦斯と電気の光がぽつぽつそこらの店硝子を彩どり始めた。ふと気がついて見ると、敬太郎から一間ばかりの所に、廂髪に結った一人の若い女が立っていた。電車の乗降が始まるたびに、彼は注意の余波を自分の左右に払っていたつもりなので、いつどっちから歩き寄ったか分らない婦人を思わぬ近くに見た時は、何より先にまずその存在に驚ろかされた。
二十七
女は年に合わして地味なコートを引き摺るように長く着ていた。敬太郎は若い人の肉を飾る華麗な色をその裏に想像した。女はまたわざとそれを世間から押し包むようにして立っていた。襦袢の襟さえ羽二重の襟巻で隠していた。その羽二重の白いのが、夕暮の逼るに連れて、空気から浮き出して来るほかに、女は身の周囲に何といって他の注意を惹くものを着けていなかった。