Japanische Klassiker mit Furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme
これほど骨を折って網を張った中へかからない鳥は、西の停留所から平気で逃げたんだと思うと、他を騙すためにわざわざ拵らえた婆さんの予言も、大事そうに持って出た竹の洋杖も、その洋杖が与えてくれた方角の暗示も、ことごとく忌々しさの種になった。彼は暗い夜を欺むいて眼先にちらちらする電灯の光を見廻して、自分をその中心に見出した時、この明るい輝きも必竟自分の見残した夢の影なんだろうと考えた。彼はそのくらい興を覚ましながらまだそのくらい寝惚けた心持を失わずに立っていたが、やがて早く下宿へ帰って正気の人間になろうという覚悟をした。洋杖は自分の馬鹿を嘲ける記念だから、帰りがけに人の見ていない所で二つに折って、蛇の頭も鉄の輪の突がねもめちゃめちゃに、万世橋から御茶の水へ放り込んでやろうと決心した。
彼はすでに動こうとして一歩足を移しかけた時、また先刻の若い女の存在に気がついた。女はいつの間にか宝石商の窓を離れて、元の通り彼から一間ばかりの所に立っていた。背が高いので、手足も人尋常より恰好よく伸びたところを、彼は快よく始めから眺めたのだが、今度はことにその右の手が彼の心を惹いた。