Japanische Klassiker mit Furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme
、一段高くなった人道の端に立っていた。傍には次の電車を待ち合せる人が二三散らばっていた。彼らは皆向うから来る車台を見つめて、早く自分の傍へ招き寄せたい風に見えた。敬太郎が立ち退いたので大いに安心したらしい彼女は、その中で最も熱心に何かを待ち受ける一人となって、筋向うの曲り角をじっと注意し始めた。敬太郎は派出所の陰を上へ廻って車道へ降りた。そうしてペンキ塗の交番を楯に、巡査の立っている横から女の顔を覘うように見た。そうしてその表情の変化にまた驚ろかされた。今まで後姿を眺めて物陰にいた時は、彼女を包む一色の目立たないコートと、その背の高さと、大きな廂髪とを材料に、想像の国でむしろ自由過ぎる結論を弄あそんだのだが、こうして彼女の知らない間に、その顔を遠慮なく眺めて見ると、全く新らしい人に始めて出逢ったような気がしない訳に行かなかった。要するに女は先刻より大変若く見えたのである。切に何物かを待ち受けているその眼もその口も、ただ生々した一種華やかな気色に充ちて、それよりほかの表情は毫も見当らなかった。敬太郎はそのうちに処女の無邪気ささえ認めた。
やがて女の見つめている方角から一台の電車が弓なりに曲った線路を、ぐるりと緩く廻転して来た。