Japanische Klassiker mit Furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme
舟へ乗って出たのかねと叔父が聞くと、婆さんは多分あの船だろうと答えて、手で海の上を指した。靄はまだ晴れなかったけれども、先刻よりは空がだいぶ明るくなったので、沖の方は比較的判切見える中に、指された船は遠くの向うに小さく横わっていた。
「あれじゃ大変だ」
高木は携えて来た双眼鏡を覗きながらこう云った。
「随分呑気ね、迎いに行くって、どうしてあんな所へ迎に行けるんでしょう」と千代子は笑いながら、高木の手から双眼鏡を受取った。
婆さんは何直ですと答えて、草履を穿いたまま、石段を馳け下りて行った。叔父は田舎者は気楽だなと笑っていた。吾一は婆さんの後を追かけた。百代子はぼんやりして汚ない縁へ腰をおろした。僕は庭を見廻した。庭という名のもったいなく聞こえる縁先は五坪にも足りなかった。隅に無花果が一本あって、腥ぐさい空気の中に、青い葉を少しばかり茂らしていた。枝にはまだ熟しない実が云訳ほど結って、その一本の股の所に、空の虫籠がかかっていた。その下には瘠せた鶏が二三羽むやみに爪を立てた地面の中を餓えた嘴でつついていた。僕はその傍に伏せてある鉄網の鳥籠らしいものを眺めて、その恰好がちょうど仏手柑のごとく不規則に歪んでいるのに一種滑稽な思いをした。