Japanische Klassiker mit Furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lesen Sie 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.333 Zeichen · 385 Bildschirme
千代子の泳の噂が出た時、髪結は活溌で宜しゅうございます、近頃の御嬢様方はみんな水泳の稽古をなさいますと誰が聞いても拵えたような御世辞を云った。
妙な事を吹聴するようでおかしいが、実をいうと僕は女の髪を上げるところを見ているのが好きであった。母が乏しい髪を工面して、どうかこうか髷に結い上げる様子は、いくら上手が纏めるにしても、それほど見栄のある画ではないが、それでも退屈を凌ぐには恰好な慰みであった。僕は髪結の手の動く間に、自然とでき上って行く小さな母の丸髷を眺めていた。そうして腹の中で、千代子の髪を日本流に櫛を入れたらさぞみごとだろうと思った。千代子は色の美くしい、癖のない、長くて多過ぎる髪の所有者だったからである。この場合いつもの僕なら、千代ちゃんもついでに結って御貰いなときっと勧めるところであった。しかし今の僕にはそんな親しげな要求を彼女に向って投げかける気が出悪かった。すると偶然にも千代子の方で、何だかあたしも一つ結って見たくなったと云い出した。母は御結いよ久しぶりにと誘なった。髪結は是非御上げ遊ばせな、私始めて御髪を拝見した時から束髪にしていらっしゃるのはもったいないと思っとりましたとさも結いたそうな口ぶりを見せた。