Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
Lesen Sie 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 337.181 Zeichen · 676 Bildschirme
お粂とおつや
右衛門七の声が二階ですぐ、
『はい』
と聞えて、起つ気配がした。
降りて来て――梯子段の蔭に佇立んでいるお粂のすがたを見ると、彼は、ちょっと、顔を紅らめながら、
『――何ですか、叔父さん』
と、神崎与五郎の善兵衛へ向って云う。
『ちょっと、店頭を見て来てくれ』
『お店ですか』
右衛門七は、店へ出て、暖簾の外まで、注意ぶかく覗いた上、
『べつに何も変った事はございませんが……何です? ……何かあったんですか』
『吉良様の御家来清水一学様が今そこに立って、二階を見上げていたと――お粂さんが云うのだが』
『人違いでしょう』
『そうかも知れないね』
善兵衛は慰め顔に、悄れている彼女のすがたへ眸を向け、
『――お粂さん、誰もいないそうですよ。今のうちにお屋敷へ帰れば、何の事もありはしない。手前が裏門まで、送って行って上げましょうか』
『いいえ……』
お粂はかぶりを振ったが、梯子段の下を動こうとはしない。もう陽が暮れたので、屋敷へは帰らねばならぬし、右衛門七のそばには何時までもいたい様子なのだった。
『…………』
双つの袂を手に持って、粂はほろほろと白い頬に涙のすじを描いていた。