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Japanische Klassiker mit Furigana

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あらじょたい

日本の文学 9 徳田秋声(一)

徳田 秋声

Lesen Sie 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 346.393 Zeichen · 692 Bildschirme

Aozora Bunko

六十二

六十二

「あなたあなた……。」と、お銀は外から帰ると書斎へ入って行く笹村の後を追いながら声をかけた。

出癖のついた笹村は、毎日あわただしいような心持を、どこへ落ち着けていいか解らなかった。ちょうど長火鉢のところから見える後庭の崖際にある桜の枝頭が朝見るごとに白みかかって来る時分で、落着きのない自分の書斎を出ると、気紛れな笹村の足はどこという的もなしにいろいろの方へ嚮いて行った。それでもやはり机のあたりが気にかかって、出たかと思うと、じきに帰って来るようなことが多かった。

「ひょっとすると、私たちはこの家を立ち退かなければならないかも知れませんよ。」

お銀は坐るまもなく、今日この家の買い主らしい隠居をつれて、家主の番頭の来たことを話し出した。

「へえ、そうかね。」と言って、莨をふかしている笹村の頭には、まだ世帯持ちらしい何物も揃っていないが、何や彼や複雑になって来た家を移すということの億劫さが思われた。引っ越すには纏まった金を拵えなければならなかった。

「けど立ち退くにしても、いずれ今日明日ということでもないでしょうからね。」

お銀は笹村に安易を与えるような調子で言った。