Japanische Klassiker mit Furigana
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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Lesen Sie 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 346.393 Zeichen · 692 Bildschirme
爽かな初夏の雨は、汽車の窓にも軽く灑いで来た。窓の前には、雨を十分吸い込んだ黒土の畑に、青い野菜の柔かい葉や茎を伸ばしているのが見えたり、色の鮮かな木立ち際に黝んだ藁屋が見えたりした。汽車のなかには、日光へ行くらしい西洋人の日にやけた紅い顔なども見えた。汽車は次第に山の方へかかって行った。深い雑木林が、絶えず煽りを喰って、しなやかなその小枝を揺がし、竹藪からすいすいした若竹が、雨にぬれた枝を差し交していた。古い油絵に見るようにこんもりした杉のところどころに叢立っているのが、山の気の深さを感じしめた。
鉄道が敷けてから、急に寂しくなって来たその町は、耳がしんとするほど静かであった。かなり大きな家のある広い通りにも、人の影が疎らであった。
宿の広い土間から、裏二階の座敷へ案内された笹村は、落着きもなく手擦り際へ出て庭を眺めたり、額や掛け物を見つめたりしていたが、階下に飼ってある小禽の幽かな啼き声が、侘しげに聞えて来た。
日暮れになっても、雨はしとしとと降っていた。
七十八
容易に坐り癖のつかない、そこの広い部屋の寂しさに慣れるまでには、かなり間があった。