Japanische Klassiker mit Furigana
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あらじょたい
日本の文学 9 徳田秋声(一)
徳田 秋声
Lesen Sie 日本の文学 9 徳田秋声(一) (あらじょたい) von 徳田 秋声 (とくだしゅうせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 346.393 Zeichen · 692 Bildschirme
しかたなしさ。」
お増をそこまで送りに出たお雪は、そう言って笑った。
町には灯影が涼しく動いて、濡れた地面からは、土の匂いが鼻に通って来た。
九
日が暮れてからは、風が一戦ぎもしなかった。お増は腕車から降りて、蒸し暑い路次のなかへ入ると、急に浅井が留守の間に来ていはせぬかという期待に、胸が波うった。しばらく居なじんだ路次は、いつに変らず静かで安易であった。先の望みや気苦労もなさそうな、お雪などのとりとめのない話に、撹き乱されていた頭脳が日ごろの自分に復ったような落着きと悦びとを感じないわけに行かなかった。浅井一人に、自分の生活のすべてが繋っているように思われた。男の頼もしさが、いつもよりも強い力でお増の心に盛り返されて来た。
「ただいま。」
お増は鍵をあずけて出た、お千代婆さんの家の格子戸を開けると、そういって声かけた。
茶の間のランプが薄暗くしてあった。水口の外に、女中が行水を使っているらしい気勢がしたが、土間にははたして浅井の下駄もあった。
「おや二階でまた始まっているんだよ。」
お増は浅井に済まないような、拗ねて見せたいようななつかしい落着きのない心持で、急いで梯子段をあがった。