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Japanische Klassiker mit Furigana

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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

Lesen Sie 日本怪談大全 第一巻 女怪の館 (がまのち) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.678 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

「それ来たよ」

「いやよ」

私とお幸ちゃんとの小さな声が終るか終らないかに一人の男が入って来た。

「ちょッ、いやな晩だ」

それはよれよれの黒いインバを着て、雪を払ったであろう鳥打帽を右の手に持っていた。

「いらっしゃいまし」

お幸ちゃんが声をかけると、その男は私の隣になった何人もいない食卓へ往って、私と同じように壁を背にして身を投だすように腰をかけた。

「姐さん、一合つけてくれないか」

それは蒼い顔をした額のせまった男で、車屋の壮佼とでも云えそうなふうつきであった。私は額のせまった、酒でわからなくなりそうなその男の顔を見ていた。

「お待たせいたしました」

お幸ちゃんが酒を持って往って酌をすると、彼は指をふるわしてそれを受けて口にした。

「姐さん、いやな晩じゃないかよ」

「いやなものが降ってまいりましたわ、ね、え」

「いやな晩だ、二三ばい飲まなくちゃ、やりきれない」

彼はお幸ちゃんの置いた一合罎を執るなり、己で注いで飲み、また注いで飲んで、三ばい目の杯を下に置いた。

「これでやっと気もちがよくなった」

「お寒かったでしょう」

「いや、寒いよりもへんな晩だからね、おれ、えれえ目に逢ってるのだからね」