Japanische Klassiker mit Furigana
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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本怪談大全 第一巻 女怪の館 (がまのち) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.678 Zeichen · 394 Bildschirme
その電車も数多の人で、硝子窓が一処二処おりていた。その前の窓際に顔を斜にして乗っている女があった。私はいきなり隻手を挙げて、
「弘光さん」
と大声で云った。と、むこうの方でも顔をあげてこっちを見たが、私であることが判ったのか、ちょと頭をさげて見せた。たしかに彼女はお八重であった。私は櫛のことも神保町の巷の中の家のことも忘れてしまったように、また彼の女の住居を知ろうと思いだした。私の心には、初めのような興味が湧いて来た。
私はその翌日からまた会社の往き帰りに、壮い女に注意するようになったが、その四五日は姿の似た女にも往き逢わなかった。ところで、その次の日曜日のことであった。その日は雨が降ったので、どこへも往かずに、二階の書斎で雑誌を読んだり、手紙を書いたりしていた。もう、三時でもあったろうか、夏生れた男の子が泣き立てているところへ、何人か女らしい客があって、妻室は泣き叫ぶその子を抱きながら取次していたが、
「弘光さんがいらっしゃいました」
と大声で云うので、果して彼の女が私の処を訪ねて来たと思った。私は二階のあがり口へ顔をだして、
「さあ、どうぞ、おあがりなさい」