Japanische Klassiker mit Furigana
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がまのち
日本怪談大全 第一巻 女怪の館
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本怪談大全 第一巻 女怪の館 (がまのち) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.678 Zeichen · 394 Bildschirme
「おあがりになりましたよ、変ですね」
もう三度逢っている不思議が、私の頭に生きかえった。私は背筋が寒かった。が、うっかりしたことを云おうものなら、気の弱い妻室が恐がって、この家の尠いのに、また家を変ろうなどと云いだされては、第一正月を控えて大に困るから、
「お前が、人の来たように思ったのじゃないか」
「そうじゃありませんよ、たしかに弘光とおっしゃってから、おあがりになりましたよ、茶と黒の立縞になった羽織を着ていましたのよ、お召でしょう」
「じゃ、泥棒じゃないか」
「そんなことをするような方じゃありませんよ、上品な好い方でしたよ」
「そいつはおかしいな」
と、云っているうちに私は妻室への気やすめを思いだした。
「人を間ちがえて入って来て、お前を見て気が注いたから、そっと帰ったかも判らないよ」
「そうでしょうか、でも、玄関へあがって、お二階の梯子段を、一二段あがる時まで、見ていたのですもの」
「それは、お前にきまりが悪かったから、あがるように見せかけて置いて、お前が引っ込んだ間に、逃げて往ったものだよ」
「でも、随分だわ、ねえ」
「男であったら、まちがったらまちがったで、平気で云うが、女だから云えなかったさ」