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Japanische Klassiker mit Furigana

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がまのち

日本怪談大全 第一巻 女怪の館

田中 貢太郎

Lesen Sie 日本怪談大全 第一巻 女怪の館 (がまのち) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.678 Zeichen · 394 Bildschirme

Aozora Bunko

刀は額の真中から鼻の上にかけて真向に入ったが、すこしも血が出なかった。女は両眼を静に開けて太郎左衛門を見た。彼はその顔を見定める間もなく、二の刀で乳母の首に切りつけた。その刀も深くずぶりと手答えがしたが、それもすこしも血が流れなかった。と、乳母は寝返りして太郎左衛門の顔を見た。

「お前さんは、なんで己の奥方の生命を縮めなさる、その女はお前さんの奥方の魂だよ」

そう云うかと思うと乳母はすっくと起った。縮れ毛の醜い女ではなくて三十前後の小柄な男であった。それは京の九条の天神裏の草庵でとり逃がした入留満であった。入留満は揮り返って、

「邪見なお前さんの心にも天国が近づいて来た」

と、云って莞と笑ったが、そのまま室の外へ出て往った。太郎左衛門の手から刀が落ちた。太郎左衛門はあっけにとられてそれを見送っていたが、ふと気が注いたので壮い女の方へ眼をやった。そこには何人の影もなかった。その時であった、太郎左衛門の室の方で慌しい人声がした。

太郎左衛門の室の次の室で寝ていた女房は、ふいに叫ぶとともにそのまま絶命した。それを婢が知って大声を立てたところであった。太郎左衛門は女房の枕頭に坐って夢を見ている人のようにしていた。