Japanische Klassiker mit Furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lesen Sie 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 158.540 Zeichen · 319 Bildschirme
いたずら者もこの物々しい警戒に恐れたらしく、それから五、六日は半鐘の音を立てなかった。十月もお会式の頃から寒い雨がびしょびしょ降りつづいた。この頃は半鐘の音がしばらく絶えたのと、雨が毎日降るのとに油断して、町内の警戒もおのずとゆるむと、あたかもそれを待っていたように、不意の禍がひとりの女の頭の上に落ちかかって来た。
女は町内の路地のなかに住んでいるお北という若い女で、以前は柳橋で芸奴を勤めていたのを、日本橋辺のある大店の番頭に引かされて、今ではここに小ぢんまりした妾宅を構えているのであった。その日は昼間から旦那が来て五ツ頃(午後八時)に帰ったので、お北はそれから近所の銭湯へ行った。女の長湯をすまして帰って来たのは五ツ半を廻った頃で、往来のすくない雨の夜に大抵の店では大戸を半分ぐらい閉めていた。雨には少し風もまじっていた。
路地へはいろうとすると、お北の傘が俄かに石のように重くなった。不思議に思って傘を少し傾けようとすると、その途端に傘がべりべりと裂けた。眼に見えない手がどこからかぬっと現われて、お北の三つ輪の髷をぐいと引っ掴んだので、きゃっと云ってよろける拍子に、彼女は溝板を踏みはずして倒れた。