Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme

Aozora Bunko

青額に、講武所風の髷先が、散らばって、少し角ばった苦みのある顔へ、酒のいろを、ぱっと発している。三十前後の男である。

気をのまれて、二の句を、ぐっとのんでいると、

「一ツ橋の部屋住どもだな。こういう、次三男坊が多いから、江戸も腐る。酒もいいが、俺みたいに飲め。一升や二升のんでも、まだ、これくらいな性根はある」

端っこにぼんやりしていた一人の横顔を、平手で、ぴしゃりと、撲りつけた。

「あっ」

顔をかかえて、友達の胸へ、勢いよく頭を持ってゆくと、二人が、諸倒れに、西瓜屋の縁台へ転がった。

「やったな」

「やった」

「一ツ橋と知ってやったな」

「無論」

「こいつッ!」

一人が、組みつくと、銭湯屋の溝溜りから、どす黒い水が、刎ねあがったのと、一緒で、草履は、空に、とんでいた。

「およしっ。――およしなさいっ」

西瓜屋の客、親父、往来の者などが、それをきっかけに、酔ってる人々を、あわてて抱きとめた。

「人斬り健吉ですぜ、あの侍にかかって、斬られちゃつまりません。およしなさい」

「健吉、何者だ。主家の名を、辱められて、捨ておけるか」

その健吉の影が、路地を抜けて、もう銀座横町へ出ているのを見送りながら、急に、喚き合ったが、誰の顔にも、酒の気はふき消されていた。