Japanische Klassiker mit Furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme
時雨風呂
一
「そう云うなら勝手にしたまえ」
「見ておれ」
彼が、大刀を抜こうとすると、
「武市さん、およしなさいよ」
笛のお菊ちゃんが、後ろに来ていた。二人は、この浜中屋の娘とは、顔なじみらしく、
「や、おまえ、どうしてここへ来たのだ」
お菊ちゃんは、眼に、怨をふくんで、
「桂さんも、桂さんじゃありませんか。黙って見ているなんて――」
「でも、半平太が、ああ云い出したら、肯きやせん」
「肯けないなら、私が、お対手になりましょう。露八さんを、斬りなどしたら、私が、承知しないからいい」
「これは、驚いた。お菊、その男は、おまえの知人か」
「ええ、私の恋人」
「正気か」
「半平太さんや、小五郎さんのように、お酒の上で云うのではありませんよ」
時雨風呂
一
「ちょっと飲もう。お菊の愛人とあれば、仲直りをせずばなるまい」
桂の云い出しで、四人は、神明裏の更科へ入った。
「私、お蕎麦は食べたくない。私家までいらっしゃいよ」
お菊ちゃんは、そこの門口で、渋ったが、
「贅沢を云うな。それに、お前の家へなど行ったら、金がかかっていかん」
と、武市が引っぱり込んだ。
しかし、更科の二階は、芝浦の海が見えて、清楚だった。