Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme

Aozora Bunko

三

そして笛の穴に、彼女の息が白く見えた。

三

啼かぬ千鳥を聴いて、ありったけの酒を飲み尽くして、そして歌い飽いて、めいめいは、ぞんぶんに酔った。

ギイ、ギイ、と髪切り虫の啼くように櫓臍の音が、そよとも波のない暗い海を帰り路についている……

「オヤ」

斧四郎に、膝枕をかしていたお喜代が、

「――後の船は、どうしたのだろう?」

海へ、顔を出して見まわした。

江戸川尻を出るまで、連れだったもう一艘が、途中から灯も見えなくなっていた。その方の船には、お菊ちゃんと、桂と、露八とだけが乗っていた。

(このごろ、あの人、露八さんに何だかおかしい様子がある……)

お喜代は、斧四郎旦那の重い頭に膝のしびれを感じながら、ふと、嫉妬を感じて、見えぬ闇を、つよい眼で見つめた。

「どうしたのだろう、船頭さん」

船頭は、艫で、

「心配はありませんよ」

「でも……」

お喜代が、まだ、もじもじして、船頭に船を止めて、待っているように吩咐ると、斧四郎が、膝で薄目をあいた。

「いいから、先へやれ、先へやれ。酔いが醒めたらどうもならんぞ」

お喜代の手を抱くように握って云った。お喜代は、なぜなのか、その手を急にぎ離したくなった。