Japanische Klassiker mit Furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme
颱風圏
一
「ちょっ……ちょっと待って下さい」
露八は、坊主頭を撫でて、
「父の最期とおっしゃったが、それは、誰のことで」
「まだご存じないのか」
「知りません」
「ふーむ。つい四、五日前のことですぞ。土肥半蔵殿は八十三郎殿破牢の一件やら、例の闘鶏師どもの執念ぶかい脅喝やらに、ひどい気鬱に罹られたらしく、公儀の呼び出し状をうけた当日、武島町の一室で、自刃めされたという話、平岡様から確と聞いたが」
「げッ。……ち……父が」
露八は、舌を噛んだようにさけんだ。
颱風圏
一
青木山の中腹に、石段と森と古い六角堂がある。渋沢は落葉を払って、
「土肥君、ここならゆるりと話ができる。――さて、貴公の坊主頭は一体どうした理だ」
と、縁に、腰を下ろした。
露八も並んで腰かけた。
ふたりの肩に落葉が降る。
「この頭が――」
と、露八は手を乗せて、
「父を殺したようなものだ。ああ、面目ない」
「悔やんだところで、お父上が、生き回るわけもなし。この上は、精神を入れ換えて、武士を磨き直すことが、貴公のただひとつの道ではあるまいか」
「武士を磨く。……こう錆びた体になってしまっては、それもいまさらむずかしい」