Japanische Klassiker mit Furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme
磧の夜霜
一
磧の夜霜
一
「では、ここでお別れするか」
三条大橋で、渋沢は足をとめた。
「――河原町の薬師寺に、平岡様とともに当分ご一緒にいるつもりゆえ、いつでも訪ねてくれたまえ」
露八は、ほっと、気が楽になった。
「いずれ伺います。――平岡様のいない折にでも」
「いてもよかろう。酸いも辛いもご存じの御用人だ」
「でも……」
露八は、京の往来がめずらしかった。同時に、今夜からの寝床をふと考えていると、例の百姓くさい財布を解いていた渋沢が、
「土肥氏、すくないが、早速にお困りは金だろう。費ってくれ」
「え」
手を引っ込めて、
「あなたにはまだ、古い借金も済していない。こんな物を貰っては」
「遠慮するな」
無理に懐中へ押し入れて、
「――どうだこの京都は、江戸とは、活気が違うだろう、当分、見学するさ」
渋沢に別れると、露八は、初めて自分が自分のものになった気がして、
(アア窮屈だった)
思いきり、伸びでもしたいように、さて、加茂川というのは、これかと眺めた。
ふところへ、渋沢がくれて行った金の紙包をあけてみると、糊付けの小判が二十枚、ぺたんと一個になっている。この金の塊りと、あの渋沢のみみッちい性格と、どう考えても、露八にはつりあいがとれなかった。