Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme

Aozora Bunko

指踊り

一

「もし」

と、手招きした。

寄って行くと、

「ここから上がって下さいな」

「へ。何ですか」

「二階のお客様が呼んでくれとおっしゃるから」

「座敷へ上がり込んじゃ興が醒める。弾く方も、聴く方も、外でこそ流しの味、金襖では野暮になる。そうおっしゃっておくんなさい」

「いいえ、荻江を弾けというのではなく、お客様が何かお前さんに、訊きたいことがあるんですって」

「へ、私に」

露八は、誰だろうと、首をかしげた。

指踊り

一

京壁の冷たい屋造作がいとど寒い肩をすぼませて足の裏から床冷えを感じてくる。仲居の持つ手燭は、仲居の白い息を見せながら、飴色に拭き艶のでている面皮の柱をいくつも曲がって、狭い廊下をこの家の奥へと跫音もなく先へ歩いて行くのだった。

「流しさん……。こちら」

火燈口の小襖に手をかけながら、仲居は、膝を折って云った。

「此室ですか」

露八は、中へ入って、破れ三味線を後ろへおいた。とにかくと――相手は誰か分からないが、招ばれたままに来てみたのであるが。見れば、友禅の炬燵蒲団に胸を埋めて、ちょっと澄まし気味の丸髷の若御新造が、こっちの入るときからの身ごなしをにやにやと頭の高い顔して眺めている。