Japanische Klassiker mit Furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme
「出られねえ事情なんでさ。――で、昨夜も彼女と相談したんですが」
「へ……、もう相談ですか、いいなあ、男と女ってえものは」
「老婆が、笑ってら。もうそう揶揄うのは勘弁してくれ。……ところで永い間、お世話になりやしたが、今日は、お暇をしますぜ。借金を払いますから、勘定書をこさえておいておくんなさい」
「どうしてね……せっかく、住みついたものを。……流しができないなら、この辺に小さな借家でも見つけちゃどうですか」
「ありがと。――だがどっちみち、この土地ゃあ、あっしの肌にあわねえ気がする。なにも、京都がじゃあねえが、今、この御所のお膝下を、わがもの顔して、志士でなきゃあ人間でねえような面をして歩いている奴が、どうにも、虫に触りましてね、ハハハ……いけませんやどうも……。がらにもねえ、へんてこな血の気が沸きやしてね」
口に含んだ嗽い水を、ゴロゴロと喉で鳴らしながら、眩げに、青空へ向けて顔をひっくりかえしていると、
「あなた――」
お蔦の声が、梯子段の中途でする。
あわてて、
「がぼっ……」
と水を吹きだして、
「今行くよ」
ざぶりと顔を洗って、拭きながら、二階へゆく。