Japanische Klassiker mit Furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme
露八は、それを聞いて、
「俺よりも、偉い」
と感心した。
大坂人は、大坂城の灰燼を惜しみ、露八は、それを捨てて、夜逃げ同様に落ちたという慶喜公の姿を偲んで眼をしばたたいた。
その慶喜公の近侍となった渋沢栄一はどうしたか?
(あれは、死ぬ男じゃない)
この間うちから気がかりなのは、弟の八十三郎だ。官軍は勝ち誇っているが、八十三郎の生命の保証にはならない。長州屋敷の者は、こぞって、鳥羽の戦に打って出たというから、あの砲弾の下に、弟はいるにちがいない。
「ここらで会っておかないと、もう生涯、会えない兄弟かも知れない……」
露八は、淀川に沿って、枚方の方角へと、歩きだした。血か、油か、淀は鉛色にぎらぎらして、時々、俯ッ伏せになった幕兵の死骸が空俵みたいにながれて来る。
粟生の光明寺に、長州方の浪人隊が一屯いるという。土民の話なので、確とあてにならない気もしたが、
(もし、弟がいたら)
と露八は、そこがもう戦線地帯とは気がつかないで歩いていた。
田圃越しに、畷の藪から、パチパチと、小銃で狙い撃ちをされて、彼は初めて、身を屈めた。
羅紗の烏賊帽子が、
「撃つな、捕まえろ」