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Japanische Klassiker mit Furigana

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まつのやろはち

松のや露八

吉川 英治

Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme

Aozora Bunko

二

また、露八の叔父の小林鉄之丞は、病死したというし、露八には貞淑であったのに露八は情なくばかりしていた嫁の照子も、実家の石川家へもどったまま、その後は、居所すらも知る人はないとのこと。

「堀のお喜代さんは、どうしている?」

誰よりは、忘れ得ぬ人らしく、露八が、こう訊ねると、お菊ちゃんは憎そうに、眼の隅でにらんで、

「知りません」

と、これだけは膠もない答え。

二

舂く午後の陽が桃の花の蔭に黒く暮れかけてきた。お菊ちゃんは、座蒲団をすべって、

「ずいぶん話し込みましたね」

「まあいいでしょう」

幇間の三孝は、欠伸を噛んで、

「お嬢さん、お灸は」

「お灸」

「それが目的で来たんじゃありませんか」

露八は、手を振って、

「断わるよ」

「あら、なぜ」

「実は、灸のつぼも知らないし、病のやの字も知らないが、線香一本あれやあ、資本いらずでできる商売と考えておっ始めた俄灸点師だもの、懇意な人や、きれいな女にゃ、すえられない」

「おやおや、あぶない灸点屋さんだね。だが、それにしては評判がいいのはおかしい」

「世の中あ、そんなものさ。ご一新という大した浮世の機構を勉強して来たから、露八もこれからは、きっと、食うにゃ困らねえでしょうよ」