Japanische Klassiker mit Furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme
三
「ホ、ホ、ホ、ホ」
とうとう怺えきれなくなったらしい。女は、ふきだして、竹婦人を残して、茶の間の内緒暖簾の蔭へ転げこむように、隠れてしまった。
そして、なお無遠慮に、
「アア、お腹がいたい――」
茶の間で、笑いこけていると、
「いやな、姉さんね」
庄次郎の耳を憚って、妹は姉を、叱っていた。
「ご無礼じゃないの、お客様に」
「だって……」
姉の声は、蓮ッ葉だった。
「中の姉さんに、吩咐てあげるからいい。お侍様が、怒っても、知りませんよ」
「だって、おかしいものは、しかたがないじゃないか。――それも、悪い気で笑ったわけじゃなし……」
「でも、悪くおとりになれば……」
「なったら――なお可愛いじゃないか。……ねえ、喜代ちゃん、ここへ来る人で、近頃に、あんな初心なお侍って、少ないよ。惚れてみたくなった」
「また! 姉さんは!」
妹に、打たれたか、抓られたのであろう。
「痛いッ」
上調子に云って、よけいに笑いながら、その洗い髪の白い顔が、暖簾の裾から、無遠慮に、庄次郎の方を覗いたりした。
三
居たたまれない。
庄次郎は人心地がしなかった。よくよく、
(出直そうか?)
と思ったが、預け物のうち、竹刀はとにかく、皆伝の目録だけは、どうしても、持ち帰らなければ、屋敷へ戻って、父に怪しまれるし、明日の親類どもの披露の宴には第一にさしつかえる。