Japanische Klassiker mit Furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme
弟の八十三郎が、時々、外から何か聞き囓って来ては、
「兄上、照子どのは、千蔭流の書もよく書くし、薙刀も、だいぶ習ったそうです。それに、何よりは、淑やかな婦人だそうですから、きっと、お気にいるに違いない。お楽しみですな」
などと、兄のこのごろの無口を、善意に、揶揄ったりした。
だが、庄次郎の無口は、決して、衒いではなかった。待ち遠しくも、欣しくもないのである。そして、一日ごとに板新道のお喜代の姿が、胸の中で、呼吸しているように、育っていた。
気のすすまない婚礼が、もう明日に迫っていた。その取混みの中に、
「若旦那、お手紙でございます」
庭ごしに、飛脚屋から受け取ったのを、中間の重助が、窓口から手をのばして、机に、ぽかんと、頬杖をついている彼の前へさし出した。
手紙は、二ほん。
一通は、渋沢栄一からの御直披とある厳しい書面だった。
中を見ないうちから、
(来たな! 金の催促だ)
はたと、当惑して、そのできない算だんに混濁した頭脳のまま、逃げるように、手は、もう一通の方の封を、先に、切っていた。
ひらいてみる。
これは、やさしい女文字で、短い走り書の末に、