Japanische Klassiker mit Furigana
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まつのやろはち
松のや露八
吉川 英治
Lesen Sie 松のや露八 (まつのやろはち) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 125.597 Zeichen · 253 Bildschirme
四
「今日は、ぐあいが悪い。近日こちらから伺うと……」
たびたびなので、八十三郎は、すまない顔して断りに出て行った。
やがて、戻って来て、
「では、お待ちすると云って、帰りました」
「そうか」
ほっとしたように、
「何か、文句を云わなかったか」
「べつに」
庄次郎は、苦になった。もう一年越しになる借金、吝嗇家の渋沢、催促も根気がいい。
その四十両はおろか、近頃は、天保銭一枚、自由にならない。金さえ持たせなければと――父も叔父も諜し合っているらしい。
「弱った」
窓に、頬杖をのせていると、今日も、山の藪で軍鶏の絶叫が聞こえる。ちょうど、今の自分の苦しさのように耳につく声だ。
庄次郎は、物置へはいった。何を考えたか、錆びた十手を一本、懐中へかくして、裏の垣を跨ぎかけた。すると、
「こらっ、どこへ参るッ」
父の半蔵が、雪隠の窓から呶鳴った。
「少し、外を歩いて来ます」
やや、反抗的に答えると、
「早く、帰れ」
四
藪の崖を、半町も登ると、祖先伝来の屋敷の屋根が、眼の下になる。
「ばかにしてやがる」
父への反感が、むらっと、燃えた。そして、その屋根の下に父のごとく生涯を終わることが、人間として、どうだかを、考えずにいられない。