Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

日本左衛門様、日本左衛門様、恋しい日本左衛門さま、恋、恋、恋、恋、恋、恋、恋。

――恋という字が虫のようにならびました。

ビリビリとその一枚を破って捨てると、筆の端を白い頬へ突いて、暫く首を傾げておりましたが、やがて思い切った様子に、こんどはこんな風に書いてゆく。

甲斐、鼻寺以来でございますね、日本左衛門様。

どうしたのでしょう、私は怖ろしいはずのあなたが、あれ以来、何だか忘れ得ないで悩んでおります。

あの鼻寺の本堂で、私に囁いたおことばが嘘でなければ、お蝶はほんとに救われますけれど、もしやあれは当座の嘘ではなかろうか、それとも真実のおことばかしら、と娘心は、他愛もなく、いまだに判断がつきませぬ。

お留守のあとへ参って、心残りの一筆、あわれとお読み下さいませ。またのお訪ねの折に、それが真ならば久しぶりの笑顔を、また、それが嘘ならば、お蝶の命を召されるなり、何と遊ばされるなり、御意のままに。

こう書き流して自身の名を記す所へ、文字の代りに、一筆描きに一羽の蝶の印を書きかけていますと、納屋の小窓の外へ、誰か人でも近づいて来たらしい気配に、ハッとしながら筆を置いて、側の行燈を吹き消しました。