Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
火のそばを離れ難く、そこであたりながら、頭巾や膝行袴を脱ぎすてた日本左衛門は、それを一括げにして、
「いい気持になった、もう少しここで暖まっているから、これを納屋へ抛りこんで、ついでにおれの煙草入れを持って来てくれねえか」
と、率八に渡して言う。
すぐ納屋の中へ飛び込んで行った率八は、それを置いて、いいつけられた煙草入れと一緒に巻紙の切れ端を持って、読みながら歩いて来ました。
「親分、親分」
「なんだな、それは」
「机の上にこんな物が置いてありましたが、誰でしょう?」
「どれ……」
と、焚火のそばに腰を下ろして、彼は二、三度読み返しておりましたが、それを焔の舌先へ持って行って、赤くなって舞いあがる灰の蝶々へひとみを吊り上げました。
そして、呟くように、
「今日は来るかも知れない」
と、頬へ手をやる。
「親分」
「うム?」
「誰が来るんですえ?」
「お蝶という切支丹屋敷の混血児さ」
「ヘエ、じゃ親分は、あのお蝶という娘をとうから御存じなんてすか」
「あの女にゃいろいろな理があって、江戸へ戻る前までは血眼で探したもんだが、ここへ来てからは、そんな事もしていられないので、忘れるともなく過ぎていたのだ」