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Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

「お嬢様、次郎でございます。只今!」

と、わざと元気な声で、次の間の縁先へ這い上がる。

「あ、帰ったの……」

泣いていたのでしょう、窓へよってうつ向いていた月江は、あわてて袂を離した顔を、明りにそむけて答えました。

次郎は、ちょこ然と、月江の前に畏って、

「お嬢様、あなたは其処で何をベソベソ泣いていたんですか」

「あら、何も泣いてなんかいやしないのに」

「だって眼のふちが赤くなっているじゃありませんか」

こう、ぶッ切ら棒に詰問されて来ては、絹糸のように細い佳人の哀傷も、思わず、破顔せずにはいられません。

その泣き笑いの笑くぼを指さして、

「ほーら笑って来た、今泣いた鴉がもう笑った、おりんさん、お嬢様のごきげんが直ったよ」

そこへおりんも薄茶を一服立てて来て、

「やはりお前に限りますね。さ、お嬢様、次郎も帰って来ましたから、お気持を直して、また双六盤か投扇興でも」

と言うのを、次郎はあわてて手を振って、

「いや、おいらは今も言った通り、今夜は遊んではいられないよ。釘勘のおじさんが来なければ、これから浅草まで急いで行って、あの事を早く知らして来なければならない」

「あの事と言うと、何なの? 次郎」