Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「生意気なことを!」
平手で横顔をはりつけようとすると、お粂もきいている女ではありません。
「人を見縊ったね」
蘭花のまなじりに紅をさして、馬春堂の耳たぶをつかみ、力まかせに捻り廻して、
「さ、出ておいで! 出ておいで!」
台所のほうへ引きずってゆくと、
「ちッ、この阿女がッ……」と馬春堂、真似もできない顔をして、耳がとれるか手を離さすか、大きな図ウ体を不器用にどたばたさせて、その胸元を食ッてかかる。
とたんに。
棚の瀬戸物小鉢が、いっぺんにガラガラと流し元へ落ちて粉裂したのは、孔雀と狼二つの体が、板の間へ組んで倒れたのと同時で、折から露地の表の方では、初春の獅子頭を町内に振りこんであるく笛太鼓が、景気よくチャンギリを入れて乱調子に高まりました。
「あい、ごめんよ、ごめんよ」
その時。
露地の口元が人で埋まっているのをかき分けて、やっとそこを通りぬけ、お粂の家の前へ立ったのは、柘榴の皮みたいな頬ッぺたの色に春を象徴したお人よしの率八で、
「あれ、親分……留守のようですぜ」
と、開かない格子に手をかけながら、自分のうしろにヌッと立っているふところ手の青編笠――日本左衛門へ口をとがらせてみせました。