Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
ここで嫌だの応だのと言うと、おめえの身の破滅は元よりおやじの二官まで飛んだ目にあう事になるんだぜ」
「だから、嫌じゃないんだけれど……私、だけれど、やっぱり嫌になってしまう」
前髪のほつれを眉に垂らして、袂の隅をいじくッている姿を見ると、源六はほのかに迫る匂い袋の香にだけでも酔ってしまいそうな心地でした。
「何を言ってるんだよ一体。嫌なのかい」
「いいえ」
「じゃ、承知なんだろう」
「私、向うの……」
「え、向うの?」
蠱惑にみちたお蝶のひとみが、艶にうしろへ流れたので、源六の目もそれに引かれて振顧ると、
「あの二人が嫌なのよ。ねえ、源六。あたしあんな者さえ居なければ、お前と何処へでも行きたいのだけれど……」
袂の下から、そっと、柔らかい手が忍びました――そして、ギュッと源六の手を。
あまり不意だった歓びと、生れて初めて知る幸福の巡り合わせに、かれが思わずぶるると胴ぶるいをして、その返辞をすら忘れている間に、
「ネ、ネ。だから……あの二人を殺して頂戴な」
ぽッとなった源六の耳朶へ、甘酢い息が薫りました。
「うん……うん……」と、源六はうつつになってうなずきながら、