Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「どうだい、どこか体でも痛むかね」
この人物、丹頂のお粂に襟をつまんで追い出される程、顔に似合わず、婦人には喉を細めて親切な声がらです。
「大丈夫です……はい、もうなんともありません」
お蝶は自分の犯した罪が怖ろしい。まだ何とか挨拶の言葉も知らないのではないが、自分の顔を見覚えられるのがイヤで、
「御心配下さいますな、家はすぐそこの、山屋敷の中なんですから……、今帰ってすぐに、誰かここの始末によこすといたします」
しきりと馬春堂のいたわる親切を振り切って、あたりに飛んでいる持物や塗下駄をさがし、襟や帯の身づくろいをしながら木立の影をくぐって山屋敷の方角へ、風鳥のような姿を駆けらせてしまう。
馬春堂は取り残されて、
「なあんだ……」と、酬われざるさびしさに、手のうちの玉を逃がした心地がしたが、元々、女を助けても女が取りすがってくる柄でないことは、自分の履歴が承知しているので、
「どれ……もう来るだろう」
橋の袖木に窮屈な腰を下ろして、袂落しの煙草入れと、火鎌を腰からとり出して、人待ち顔の暇つぶし煙草と出かけました。
が、幸いに、舌が脂に飽きるほど待つ間もありませんでした。