Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
捜索は遂に徒労でした。かれの猟奇心は失望をむくいられて、やがて相良金吾も、最後にむなしく引っ返してくる。
「ウーム、逃げおッたか」と万太郎は残念そうに駕の内へ潜みかけたが、そこにうずくまッている娘に目をつけて、
「金吾、この女中を、住居まで送ってとらせい。途中でまたどんな災難がないとも限らぬ」
娘が目礼する面ざしをジッと見て、駕の戸を閉める。そこへ、また四、五人の家臣も追いついて来て、男女入り交じった行列は、再び、道を急ぎだします。
市ヶ谷御門外の尾州家、部屋ずみの万太郎が住居は、邸内北がわの別棟とみえました。
途中万一を思って、娘を送らせた金吾は直ちに戻ることと思っていたが、かれがそこに落着いて、湯浴みをすまし、服をかえ、九ツ刻の時計を聞く頃になっても帰邸しない。
何となく待たれる。
「どうしたのだろうか?」
脇息に頬杖をついて、ジッと、夜更けを起き澄ましている万太郎の心に、あの白い手に剥き出された時の、紫頭巾の蠱惑な顔が浮かび出ました。どこの女子であろうか、何者の娘だろうか、その素性を聞かないうちは、床につかれぬような待ち久しさに囚われながら……。