Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

「こちの人、おひとつ」

浮いた調子で、お粂は軽く戯れながら銚子に細い指をかけて、

「いかが……」

と、少し首を曲げる。

黙然と杯をとって、金吾は苦しそうに一口グッと飲みほしました。

「私にも下さいな」

お粂は元よりいける口です。

相手がものをいわないので、さしては飲み、うけてはつぐという調子には、杯が廻らない。

でも、置注ぎで、互に数杯。

男女とも、ぽっと赤くなりました。

しかし、同じ酒瓶の酒を酌みわけて、同じように飲んでいながら、金吾の舌には毒のようにほろ苦く、お粂の舌には蜜のように甘いようです。で、酔わされるその心のうごき方が、酔うにつれてだんだんと食いちがッてくるのはやむを得ない結果でした。

「あなた」

「…………」

「何をさっき、私を睨んでいたんですか。まアいやだ……まだ怒ッているんだよ、相良さんは」

金吾はものをいいません。いわんとする時は、その口を杯でふさいでいる。

そして、両の腕をくみ、飲めば飲むほど陰鬱に、青白い顔をうつ向けています。

入湯のききめか、お粂の手当が届いたせいか、この熱海へ来てから、とにかく金吾の奇病というものも、ある程度まで回復して来たようです。