Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

率八はホウホウのていで、腰や懐をなでながら怖々とあたりを見廻し、何か落とし物に未練を残しておりましたが、万太郎の眼がジッと向いているので、

「さようなら」

と、思い出したようにお辞儀をして、ひょこひょこ歩きかけました、

すると万太郎はまた、

「あ、これこれ、率八とやら」

呼び止めると、もう沢山な顔をしながら、

「ハイ」

と、情けない返辞をする。

「率八」

「ハ、ハイ」

「貴様は所詮、盗人の中で出世のできそうな奴ではないの」

「左様でございましょうか」

「なんで泥棒になった」

「わかりません」

「どうして日本左衛門の手下などになったかとたずねるのじゃ」

「いつか、お金を恵んでもらいました。それで、恩返しに、泥棒になったようなわけで」

「ふびんな奴じゃ……」

「ど、どういたしまして」

「改心して真人間になれ! よ! 貴様には女房や子もあると、最前申していたようだが」

「きッと、家に待っているでしょうよ。何しろ、お正月から帰りませんでね」

「早く足を洗うがよい」

「食べることができますかしら」

「これをやる」

「え」

「これをやるから持ってゆけ」

「へ? ……」

「遣わすというのじゃ、遠慮するな」