Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「旦那……」
と、温い息が囁きました。
「お忘れですか」
「? ……」
「しらばッくれているんでしょう」
「…………」
「真間でお目にかかっているじゃありませんか」
「えっ」
「紅葉見の日でございますよ。あなたは殿様のお供で、私は一人で、あの釈迦堂で御一緒になりました」
「あ……」
「そしてまた今日も、ここへ来る前に、たしか観音堂の手前で逢っておりましたね」
この薄暗い中でこそ幸い、金吾はギョッとして顔色をかえたに違いありません。
真間で逢ったということは自分の方の記憶にはないが、観音堂の境内で擦れちがったのはつい今し方――あの時釘勘が自分に教えた、丹頂のお粂という女がこの者であるのは、もう問うまでもないことです。
しまった!
ここで素性を知る者にとび出されては、もう釘勘の好意も滅茶滅茶で、下手をまごつくと生きてこの聖天の河ッ童穴を出ることは不可能かもしれない。
南無三です――悪い所へ悪く目ばしこい女が来合わせたもので、さすが強胆な金吾も胸に早鐘をついていると、
「あ、それどころじゃない」
女の指が、かれの背中を突いて、
「洞白が……洞白が」
「えっ!」
「糶場に出ましたよ、お前さんの探しに来たのはアレでしょう」