Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
への往復にも、充分警戒を怠らなかったのです。
で、千束組の暗殺の手もつけ入る隙がない上に、見物を装って小屋へ紛れこんでみても、いつも伊兵衛と馬春堂がそれとなく見張っているので、とうとう千秋楽の日に、投げ短刀の放れ技で、満目環視のなかでお粂を殺してみせようと計りましたが、かれに用意があったため、伊兵衛と馬春堂の書いた狂言は、今も彼等のいっている通り、あんまりうまく当り過ぎました。
「だが、ばかにしていやがる、命の恩人を下座敷に置き忘れておいて、お粂のやつはいつまで何をしているんだ」
やがて馬春堂は、茹で上がった章魚のようになって、
「アアこれこれ、女中ども、女中ども」
と、野暮にぽんぽん手を鳴らしました。
粂吉をここへ呼べと、馬春堂か何かしきりと女中にクダを巻き初めたので、伊兵衛は外聞をはばかりながら、
「おい、よせよせ馬春堂」
「何がよせだ、お粂がここへ挨拶に来ねえという法はない。命の恩人じゃないか、わしやお前は」
「分ったよ、分ったよ」
「一応の礼に来ないというのは怪しからん。誰のために今夜のあぶない所が無事に助かったと思う? エ? 伊兵衛」
「おれに文句をこねたッてしようがあるめえ」