Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme

Aozora Bunko

――最初の気込みをすッかり殺がれて、金吾が顔色なく立ちすくんでしまった時、日本左衛門は彼にかまわず、向うの岸を、上流へ向って歩きだしています。

「お……、日本左衛門、もう一度待て」

そのうしろ姿に、はッと吾に返って、ふたたび手をあげて、五、六歩追いかけて行った金吾、

「よくぞ言ッた、今の汝のことばを、金吾はきッと忘れぬぞ」

「うム、胆に刻り込んで、おぼえておけ」

「今日は、自分として考え直したこともある故、いったんここでは見遁してやるが、後日、遠からぬうちに、必ずおのれの素首をもらいに行く。その期になって、卑怯な振舞をいたすなよ」

「ばかな!」

日本左衛門は笠をゆすぶりながら苦笑して、

「いつでも来い! 出会ッてやる。――だが、おれは風のように天下を往来する緑林の人間、また会おうと言っても、滅多に日本左衛門の居所がわかるまい」

「なんの、たとえ足にまかせ、月日にまかせて尋ねようとも、きっと、探し出して出会わずにおくものか」

「そう手数をかけさせては、おれのことばに男が立たない。……ウム、こうしよう。いつなん時でも、命が捨てたくなったならば出会いの場所と望みの時刻を書いて、何処の塀でも廂へでも貼りつけておくがいい。