Japanische Klassiker mit Furigana
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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
Lesen Sie 江戸三国志 (えどさんごくし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 577.271 Zeichen · 1141 Bildschirme
「水かい?」
と、其店の婆さんもぞんざいなもので、
「水なら懸樋から流れているだろう、いくらでも飲むがいいよ」
「オオ冷めてえ! お婆さん、うまいなアこの水は」
「うちの甘酒はもっと美味い、小仏の名物、一杯あがらッしゃい」
「飲みてえな、甘酒を」
「ついでやろうか」
「いいよ、おれは一文もおあしを持っていないもの」
「なんだ、おめえは、銭なしで旅をしているのか」
「連れの人にはぐれたので、まだ午飯も食べることが出来ないのさ。……弱ったなあ、何処で道をちがえてしまったンだろう? ……もしやお婆さんは、おいらの連れを見かけなかったかい」
「どんな人?」
「偉い人だ」
「ただ偉い人だけじゃわからない。町人かね、それとも、お侍かね」
「一人は町人で、一人はお侍様でおいらが宿屋へ忘れ物を取りに返っているうちに、何処かへはぐれてしまったのさ」
「はアてね……今日はずいぶん人が通ったからなあ? ……」
「困ったなあ、おいらは、その人に会えないと、また今夜も御飯を食べることが出来ない」
と、さも落胆したように、杖にしている野槍をもって、しきりと腹の虫を悶えさせる甘酒の釜の前に、どっかり腰をおろしました。